羊の時刻

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ダルデンヌ兄弟『ロルナの祈り』視聴。

 Netflixのおかげで映画(に限らず、映像作品)を観る習慣が復活した。

 レンタル屋の品揃えは私の主観では年々ひどくなる一方だし(続け借りやまとめ借りで稼ぎ頭になってくれるからという計算からなのだろう、海外ドラマばかり優遇されてしまって往年の名作や隠れた佳作の在庫がじゃんじゃん処分されていってる)宅配レンタルは退会手続きがめんどくさいらしいし、引っ越しが多くてしかも不定期だから工事費や手続きのめんどくささを考えるとケーブルテレビには入れないし地方都市の映画館は漫画の実写化ばっかりだし、困難ばかり立ちふさがるのでここ数年は「映画」という娯楽がこの世にあることを意識的になるべく忘れておくよう務めていた。もともと映画は好きだからつらかったけれど、このままこれが一生続くのだと諦めていた。

 そこへPS4

 そしてNetflix。世界が変わった、と言うか戻った。レンタル屋さんへの行き帰りが楽しかった頃の世界に。ありがとうFallout4そしてFarcry4。あなたたちがこの世に無かったらPS4を買うことは無かった。ありがとうベゼスダありがとうユービーアイソフト。(PS4が無くてもパソコンでNetflixは観られるけど音響とか画面の大きさとか使い勝手とか考えると居間で手軽に操作できるPS4が良い)

 そうだ忘れちゃいけない、何と言っても『BLAME!』に最大級の感謝を。そもそもBLAME!を観るために入会したんだった。最高の出来だった。最高の花澤香菜だった。

 

 今日はダルデンヌ兄弟の『ロルナの祈り』を観た。

 これまでこの監督の映画は『少年と自転車』『サンドラの週末』『ある子供』と観てきて、ひとつ観るたびにさらに好きになった。ダルデンヌ監督の映画を観て心が動かなかったことは一度も無い。今回は、映画の途中でカタカタ、カタカタという音に(なんの音だ?)と映画から引き戻されてみるとそれは自分の歯と歯がぶつかり合っている音だった。

 私はどちらかと言うと映画の中でどれだけ感動的に人が死のうが国が滅ぼうが星が爆発しようが(たーまやー)(かーぎやー)と冷めた気持ちで見物してしまうほうの人間だけど、この映画の中である出来事が発生した時、私はまるっきり当事者になって震えていた。

 こういう時にこういう震え方を人間はするんだ、と思った。ダルデンヌ兄弟の撮り方の『生々しさに引き込む力』の凄さを今回体で知った。

 そしてダルデンヌ兄弟の提示する希望は、時に絶望よりも重たいということを再確認した。『ある子供』もそうだった。