羊の時刻

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文フリ大阪への参加について。

 9月の文学フリマ大阪には、

「9月に、日本でコロナ禍が終息していたら」

 参加します。

 と、いうことに決めました。

 

 

 もし、文フリ大阪が開催できなくなったなら、その次の文フリ京都に参加申し込みするつもりです。

 それもだめなら、その次は5月(4月?)の東京かなあと。

 今言えるのは、コロナがなんとかなったら、必ずまた文フリに出ます、ということです。それがいつになるのかはわかりませんが、それを励みにコロナ対策をがんばります。

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 それではどうか、お体に気をつけて。

 

 

 

Aharon AppelfeldのThe Story of a Life読了。

“I do not pretend to be a messenger, a chronicler of the war, or a know-it-all. I feel attatched to the places I have lived in, and I write about them. I don't feel that I write about the past. Pure and unadulterated, the past is no more than good raw material foe literature. Literature is an enduring present──not in a journalistic sense, but as an attempt to bring time into an ongoing present.”
(──Aharon Appelfeld, The Story of a Lifeより抜粋)

 七歳のとき戦争が始まってすぐに母親を射殺され、父親とは強制収容所で別れ、収容所から脱走してからはたったひとりでウクライナの森で生き延びた(その頃ウクライナの農民から斧を投げつけられた話は別のエッセイ本A Table for Oneに収録)ホロコーストサバイバーである著者の、戦争の「前」と「最中」と「その後」とでばらばらに分割された記憶と体験の再統合の試みとしての回想録。
 凄惨な経歴を経たこの人は多くの人にそうするようにとアドバイスされながらも歴史の重さとつらさを証人として背負って叫び続ける作家にはならず、小さな声でささやかな光と静けさの愛しさを語り続ける作家になった。その語り口が私はとても好きだ。


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 この人の前半生をざっくりと『バーデンハイム1939』の訳者後書きで知ったとき、そんな経験をした人が、その後の人生でなにかを楽しいと思ったり、素敵だと思ったり、好きだと思ったりすることができたのだろうか? と、私は怖くなって、それでこの人のエッセイA Table for Oneを取り寄せて読んだ。そうしたらこの人がコーヒーと、コーヒーを飲む喫茶店でのひとときを愛している、と繰り返し書いていたのでほっとして嬉しくなった。この人の小説には食べ物と飲み物がいつもとても美味しそうに出てくるところも好き。 

 

『バーデンハイム1939』再読

インスタから転載、ふと今日読み返した本の事。


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“バーデンハイムでの日の過ごし方がすっかり変わってきた。もう昔のように森のなかの散策もなければ、旅行やピクニックもなくなり、ぶらっと出かけるということも、あらかじめ計画してみんなで出かけるということもなくなり、生活の場はホテルと駄菓子屋、それに水泳プールに狭められた。”
(アハロン・アッペルフェルド『バーデンハイム1939』みすず書房 p.49より抜粋)

去年の7月に買って読んだ本をなんとなく読み返していて、どきっとした。去年これ読んでるときはまさか次の年に自分がこれに近い毎日を送ってるとは夢にも想像してなかった。

この本、原題だと「保養客の町バーデンハイ厶」で、年代は英訳されたとき付け加えられたらしいけど、私はそれは余計なことだったと思う。この話は過去のある一時期に限定された話じゃなくて、普遍的な話だと思う。

ハロン・アッペルフェルドはこの本がきっかけで他の本もいろいろ(日本語訳は出てないので英訳で)読んで大好きになった作家。今も数冊読み進め中。イチオシはThe Man Who Never Stopped Sleepingです。