羊の時刻

荻サカエの個人文芸部『羊の時刻』のブログです。毎月1日更新。メールアドレス hitsujinojikoku(アットマーク)gmail.com 当ブログの文章、画像等の無断転載・無断使用はご遠慮下さい。https://note.com/hitsujinojikoku マストドン始めました。https://mstdn.nijist.info/@hitsujinojikoku

出す本全部好きというわけではなかったけれど

 好きな作品を三つ挙げるとしたら、

『静かな生活』

『治療塔惑星』

『晩年様式集』

 でしょうか。

 この人がスタニスワフ・レムが好きだと知ったとき、私も大好きなので「健ちゃん(失礼)気が合うなあ」と思いました。その後何年も経って今度はストルガツキー兄弟にハマったとき、この人がストルガツキーのことも大好きだったと知って「健ちゃんほんとに気が合うなあ」と思いました。

 長年心の中で勝手に馴れ馴れしく健ちゃん呼ばわりしてましたが、今後もそうし続けます。好きなので。

 おもしろい本・文章をたくさんありがとうございました。

“これは画家のフランシス・ベーコンの言葉だけれど、現実の人体を見て、またそれの正確な表現を見て、自分の奥底の「神経組織」が……きみの慣れてる言葉だとnervous systemが突き刺される。同じことが活字によって行われる。窓の外に目をやると、風景がこれまで自分になかった観察のエネルギーをあたえられて、生きいきしている。そういうことがあるだろう?
 それは小説のいちいちの文章の、作家の観察力に引っばられ・押し出されて、瞬間的にであれ自分の目と頭に、それまで眠ってた能力が目ざめる。そういうことだ。そしてそれは、観察力が強化されるということを越えて、つまりはきみのnervous systemの全体が新しくなってるんだ……”
(大江健三郎『晩年様式集』p.269より抜粋)

 

 なお、大江健三郎を読んだことが無い人にどれか一冊おすすめするとしたら『静かな生活』です。この人の小説は「文章そのものが圧倒的に読みにくい」ものと、「他の作品を読んだことを前提としすぎているせいで読みにくい(いわゆる「初見殺し」)」ものが結構あるのですが、『静かな生活』はそのへん大丈夫です。基本的には楽しく読めるホームドラマです。

 あとは生活を書いたエッセイが好きです。『恢復する家族』とか『言い難き嘆きもて』とか。