羊の時刻

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2023年初Aharon Appelfeld

 2023年最初に買った小説はAharon AppelfeldのTo the Edge of Sorrowでした。

 静かな語り口でぞくぞくさせる中編『バーデンハイム1939』をたまたま読んで大好きになって以来この作家を買うのはこれで9冊め(そのうち積ん読が4冊)。

 アハロン・アッペルフェルドの小説は読み始めたら止まらない本と、じりじりちびちび読ませる本があって、前者はバーデンハイム1939とThe Iron Tracksが代表格。このTo the Edge of Sorrowも、7章まで読んだ印象では一気に読ませるタイプの本のようです。(バーデンハイム1939と並んで大好きな傑作The Man Who Never Stopped Sleepingは前半が一気に読ませる系、後半はジリジリ系でした)

 主人公はユダヤ人ゲットーから救出されてパルチザンになった十七歳の少年。家族から遠く離れて(離れた経緯は今のところまだ語られてないので不明)知らない土地でドイツ兵に追われ、ドイツ兵を奇襲し、食料と武器を略奪しながら「自分たちの命を救う」ための戦いを続けていく...、と、今のところそういうお話。
 今読んでる第7章では、もともと本が大好きだったのにもう何ヶ月も本の無い「洞穴人のような」生活を続けてきた主人公たちが、たまたま略奪のために入った民家で本をごっそり手に入れたところ。
 こういうの読むと、本があるのに読まないでスマホばっかり見てしまう今の世の中って、もったいないことしてるなあと思います。自戒。

 一章が短くて、語り口が簡潔で、状況が緊迫しててキャラクターがみんな立ってるからぐいぐい読まされてしまいます。そろそろトイレに行きたいのだけどあと一ページ読んでから……!

 一気に読める性格ではない、ちびちび読ませる系のアッペルフェルドの本はなかなか読み切れなくて途中で積ん読になりがち(Bloom of Darknessとか)。
 つまらなくて投げてしまうわけではなくて、話があまりにつらかったり重かったりするのが原因。
 でもこの人の文章が私はめちゃくちゃ好きなので、いずれは積ん読本もがんばって読み切る予定です。

 

 なお、小説ではなく漫画の新年初買いは諸星大二郎『無面目』と『諸怪志異 第3巻』でした。三が日のうちに一気に読了。