羊の時刻

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だいぶ出口が

近づいたかな、と、ここ数日ようやく実感し始めています。

 これまで何度も「これで行けるかな...?」と、書き上がりの見通しが立ったと喜んではそれがぬか喜びだったと分かって脱力、というのを繰り返してるので今でも警戒心は解いていないのですが。でもたぶん、完成しないということは無さそうです。

 あまりにも完成が見えないので、ここ一ヶ月くらいはふと気を抜くと目の前に東海道本線の熱海→浜松間の車窓の景色が見えてました。一部の鉄道ユーザーには「静岡ロングシート地獄」と呼ばれている延々続くあの区間

 昔さんざん在来線で行き来していたあの区間のお尻の痛さ、発狂しそうになるほどの時間の進みの遅さを、二十年ぶりくらいに身体がまざまざ思い出しました。

 あれに例えるなら今いるのは菊川あたりでしょうか。焼津は通過したと思います。

 これを書いてて、そういえば内田百間先生も「なかなか目的地に列車が着かない苦痛」についてどこかに何か書いてたっけ、と思って本棚を漁ったら案外あっさり発見できました。

 ちくま文庫の「内田百閒集成」の、鉄道の話だから第2巻『立腹帖』に入ってるかと思ったら違ってて(よくぞこれに気づいた、と自分で自分を褒めました)、飛行機や船の話が主に収録されている第11巻『タンタルス』。飛行機に乗ったあとで汽車に乗った話だからこっちに入れられたらしいです。以下抜粋。

“汽車が動き出してから、初めの内は涼しくもあるし、私はもともと汽車も好きなので、快い震動に揺られて、全身がゆったりくつろぐ様な気持がした。(中略)...ひた走りに走ってはいるが、走るばっかりで、ちっとも道が捗らない。いつまでたっても大阪に着かない、それどころか名古屋にも、浜松にすらまだ大分間がある。物々しい煙と音響で、走っていると云う事を弁解しているに過ぎない。...(中略)

 それから長い間いらいらして、じりじりして、到頭汽車の中で日が暮れたけれども、まだ大阪には着かないし、涼しくもならなかった。もういい加減あきらめて、大阪に着かなくてもいいと云う気になった後に、やっと梅田に降りたら、あんまり暑かったので声がかれて、話しがしにくかった。”

(内田百閒『内田百閒集成11 タンタルスちくま文庫 p.160-162より抜粋)

  大阪に着かなくてもいいという気になった、という記述が実感に満ち満ちていて好きです。私も関西方面の文フリに出ると移動途中で毎回こういう気持ちになります。一度でいいから空路で会場に直行して参加してみたいです。OMMビルってヘリポートあるんでしょうか。

 

【追記】

 これを「12月1日に公開」と設定して予約投稿するはずが、うっかり今日そのまま投稿してしまいました。しまった...。

 いったん公開したものを隠すのもなんなのでこれはこのままに。明日は明日で、更新できたらします。できなかったら、この30日の更新が12月1日の更新分だったということで。

 

 画像は先日散歩中に見かけた干し大根。「ねずみ大根」という品種で、信州地方の伝統野菜なんだとか。

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