羊の時刻

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秋深し

 文学フリマ京都に出ると決めてからと言うもの一日一日が木枯らしにもぎ取られるかのごとく暴力的な速さで過ぎていきます。今日が金曜日だとは思わなかった。

 出店料の払い込みを済ませたり印刷所の紙のサンプル*1を取り寄せたり、表紙用の写真を撮りに散歩に出かけたり。こたつの上には原稿の小山。

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 精神的に疲れてくると知らず知らずますむら・ひろしの作品を手に取って読み始めてしまう(大島弓子の『グーグー』シリーズも私にとってそんな作品)。結果、ひと晩読みふけってしまって時間的にはロスしたけれど、精神的には充電された。

 朝日ソノラマの《ますむら・ひろし作品集》は表紙にそれぞれの作品のための長めのキャッチフレーズと言うか、ごく短いエッセイのようなものが掲載されていて、それが私はとても好きだ。以下は『ますむら・ひろし作品集(十四) オーロラ放送局2』の表紙の文言。

 氷ギターの音と、その唄声に聞き入る。

 俳句はウニ頭親分の文学への愛をくすぐり、

 カリン島にサグラダ・ファミリアが建つ。ここではすべてが………自由だ。

 

 ますむら・ひろし作品の中でたぶん最もメジャーな『アタゴオル』(昔シチューのコマーシャルにも起用されてた)シリーズの表紙には以下の文言。  

 

 サヤサヤと吹く風のにおい。

 森に差しこむ月明り。

 金色にゆれるすすきの原。

 蛇腹沼の底に沈む万華鏡。

 豊潤な夢、透きとおった詩情。

 アタゴオル...............

 “力”では、たどり着くことのできない世界。

(ますむら・ひろしますむら・ひろし作品集(三) アタゴオル物語3 ぱるぱらん』(朝日ソノラマ)より引用)

 

  自分の作品を作るとは自分のアタゴオル*2を訪ねて行くこと。焦って力ずくで完成させようとしたって仕方ないじゃないか、と、ますむら作品を読んでいると自然と心がなだめられる。

 でも〆切は力でたどり着くもののような気がしないでもない。

 

 

*1:まさかこいついきなり100部とか刷るつもりじゃないだろうなとハラハラして読んでいるかたがもしいらっしゃったなら、大丈夫、オンデマンドでごくごく少部数刷るだけです。

*2: 「“力”ではたどり着けないなら何でたどり着くんだ?」、と家人に質問された。答えは読者の数だけあるんだろう。私は“昼寝”だと思う。